私はこのオルガンを弾いたことはありませんが、製作したBeckerath社が非常に素晴らしい楽器を創っていた時代の楽器です。
特にこの時代のこの様な楽器は、オルガンが生き生きと響くことができる作品を最優先して演奏しながら、丁寧に保存し、後世へ伝えていく使命を、私たちの世代が担うべきだと考えています。
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以下、習志野市とは関係がありませんが、ここのところオルガンの移築・増築・改築なので気になっていることをひとこと。
今日、オルガニストが「自分たちが演奏したい作品が弾きにくいから」という理由でオルガンを改築したり造り直したりする傾向が大いにあります。
オルガンは創られたその時代や場所、設置場所によってそれぞれ全く性格が異なります。
北ドイツバロックがよく響く楽器もあれば、フランスのロマン派が響きやすい楽器もありますし、戦後ドイツ20世紀の作品が非常によく合う楽器もあります。
オルガンビルダーによっても楽器の仕様や響きの性格は全く異なります。
ですので、そこにある楽器が使いにくいからといって楽器の性格をオルガニストの都合で変えてしまうのは、私は違うと思います。
オルガニストの技量というものは、それぞれに異なる楽器の性格を最優先して、いかにその楽器に最大限響いてもらうことができるか、音楽を伝えてもらうことができるのか、なのではないかと考えています。
ドイツでも今現在数多くの歴史的なオルガンに「死刑宣告」が出され、現オルガニスト・教会音楽家の趣味にあった楽器に建て替えられています。
今一度私たちオルガニストは自分たちがなぜパイプオルガンという楽器を弾いているのか、弾かせてもらっているのか、立ち止まって考えも良いのではないかと思っています。