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風琴亭

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【7日間ブックカバーチャレンジ①】

Facebookの方で流行っているようで、FBからバトンがまわってきましたが、こちらの方でもご紹介したいと思います。

ブックレビューでもいろいろな形態があるのですよね。表紙だけで内容は書かないとか、レビューみたいなの書いているのとか?何となくバトンを頂いた方の形を継承しますが、内容に関しましてはどうぞお手柔らかにお願いいたします。

ドイツ・音楽関係でバトンをいただいたので、最初はとりあえず専門分野から。
Hans-Joachim Falkenberg, "Wilhelm Sauer 1831-1916", Orgelbaufachverlag Rensch, 1990.

日本ではパイプオルガンというとバロックのオルガンをイメージしたくなるかも知れません。また、日本に設置されている多くの楽器が大概同じような戦後からバブルの時期に製作されてきたので、何となくステレオタイプ的な印象も否めません。

もう少し長い目で見てみると、音楽にもいろいろな様式があるように、パイプオルガンも時代や地方によって様々な異なる性格の楽器が生み出されてきました。Wilhelm Sauerは丁度ロマン派・後期ロマン派の時代の重要な楽器を多々製作したオルガンビルダーです。Max Regerの作品の多くはライプツィヒのトーマス教会などでKarl Straubeによって演奏されましたが、この時代のトーマス教会のオルガンもSauerの作品です。

この本が出版された1990年には、これほどまでSauerについて詳細に書かれ、また、現存するSauerのオルガンを収録したものはなかったと記憶しています。最も私も大学に入りたてで何もかもが新鮮だった頃なので、他に知らなかっただけかも知れません。

さて、内容は本当にマニアックになってしまうので詳細は書きませんが、生涯と楽器の特徴、そして1台ずつの来歴や特徴などが記載してあり、設置されている教会の情報を調べて合わせてみると、楽器の響きやどんな音楽がどのように演奏されていたのだろうと、とても楽しく想像できます。丁度その頃私自身もSauerの楽器に初めて出会ったこともあり、かなり読み溜めた上で、教会音楽の国家試験のオルガン建築学の試験ではWilhelm Sauerをテーマにしました。

...という訳で、私にとっては愛着のある本です。

そして。
カトリック五反城教会のオルガンの製作者Willi PeterはW. Sauer社で修行し、Sauer社の西側における支社設立の為にケルンに派遣された人です。Sauer社は本社が東ドイツにある為、東西分断後、必要に迫られて独自のPeter社が設立されました。
五反城教会のオルガンが造られた当時ペーター社は「脂の乗った」時期を迎えており、今でも歴史的だったと言われる精鋭整音師がパイプ一本一本を手にとって音を創り上げた楽器です。パイプもRösslerというオルガン学者と共同で開発された非常に珍しい種類が幾つか含まれています。丁度この時代の楽器が現在ドイツでは邪険に扱われがちとなっていますが、この楽器は絶対に、このまま保存して大事にしていくことで、将来必ずその歴史的価値が認識されることと思います。

Wilhelm Sauerも孫楽器が日本で設置されることは想像していなかったと思いますが......。



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by mausmirabilis | 2020-05-10 19:45 | 風琴亭の本棚 | Comments(0)